水質衛生1)


1.緒言

 我々の使用している水は、飲料用、調理用、洗濯用、入浴用、清掃用、トイレ洗浄用、消防 用、修景用、冷暖房用など多岐にわたっており、その用途に適した水質管理が必要である。すなわち、 人体と水の関連及び水道法水質基準に関連のある水質衛生について理解することである。 なお、水の摂取による健康障害には、水質由来の健康障害(水系感染症)や化学物質による健康障害がある。


2.水質と水質試験の意義 (略)


3.水と健康 (略)


4.水質由来の健康障害(水系感染症)

@水質感染症及び水系感染症を起こす病原性微生物
 水系感染症とは、水を介して病原性微生物(細菌類、ウイルス類、原生動物類)が体内に侵入し一定の臓器や組織に定着して増殖し、その結果、腹痛、下痢、嘔吐、発熱、頭痛などの症状を起こす病気のことである。 水系感染症の原因となる代表的な病原性微生物として、細菌類の赤痢、コレラ、腸チフス、腸管出血性大腸菌(0157)、ウイルス類の伝染性下痢症ウイルス、流行性肝炎ウイルスや、原生動物に属するクリプトスポリジウム、ジアルジア、赤痢アメーバ一等がある。 飲料水の安全は、原則として健康人よりも免疫力、抵抗力の弱い人を優先的に考慮すること が必要である。 その他の微生物の中にも、新潟、秋田、山形、伊豆七島等で流行するつつが虫病や、北海道 特有のエキノコックス症等の風土病があり、今後も水系感染症を起こす微生物の動向には常に気を配らなければならない。

A日和見感染症
 健康人には感染症状を示さず、乳幼児や老人、病人などの免疫力の弱い人だけに感染症状を起こす微生物による病気を日和見感染症という。クリプトスポリジウム、ジアルジア、腸管出血性大腸菌(0157)、レジオネラ属菌、緑膿菌 等がこの日和見感染症を起こす代表的な微生物である。健康人は感染しても自覚症状がないので、健康保菌者から免疫力の弱い人に感染する可能性があるので注意が必要である。

B腸管出血性大腸菌(0157:H7)
 食中毒菌として知られていたが、我が国では1996年に学校給食で大規模な食中毒事件を起こ し、死亡者を出したことから「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」 (1998・10制定、1999.4.施行)の3類感染症に格上げされた細菌である。特徴は赤痢菌の産生する志賀毒素に類似した細胞毒素であるベロ毒素を作ることで、免疫力 の弱い年少者、病人や高齢者への感染を考えて特に保育園、幼稚園、小中学校、病院、養護施設等の給水施設では感染予防に留意する必要がある。最も病原性の強い血清型は、0157:H7である。ただし、遊離残留塩素0・1mg/L以上、または75℃、1分の加熱で死滅するので、飲料水では 残留塩素が確保されていれば万が一混入しても心配はない。

Cレジオネラ属菌2)
 土壌や地下水、河川水等の自然界に広く存在しており、土塵を介してビルの冷却塔等の水に混入して増殖する。熱に弱く、60℃以上で死滅し、塩素にも弱い。飲用により感染することはないが、呼吸器からの感染により肺炎症状を引き起こすので浴室のシャワー水などで感染す ることがある。飲料水からの感染予防のためには、残留塩素を確保をすることが大切である。 病院の循環式給湯器水からも本菌が検出され、免疫力が低下している入院中の乳児が感染し、死亡する事故が起こった事例がある。24時間風呂や温泉水からも本菌が検出されている。

Dクリプトスポリジウム3)
 下痢症を引き起こす原虫で、水中では殻に覆われたオーシスト型(原虫が作り出す胞子のようなもの)で存在する。オーシストの殻は非常に硬く、塩素消毒に対して抵抗性を示すので、水道水レベルの消毒濃度では 不活性化できない。しかし、加熱、乾燥、冷凍には弱く、沸騰水中では1分以上で死滅する。

Eジアルジアその他4) (略)


5.化学物質による健康障害

 水質の代表的な成分には、トリハロメタンと鉛および硝酸態窒素・亜硝酸態窒素がある。

@トリハロメタン5)浄水過程の塩素処理により生成する。
 クロロホルム、ジプロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルムの4成分の総称をトリハロメタンという。代表的なものは、クロロホルムである。
 クロロホルムの毒性は、肝臓、腎臓、中枢神経障害および発癌性である。

A鉛:水道水中の鉛の由来は、鉛管からの溶出こよることが多い。
 乳幼児の血中鉛濃度が増すと、知能指数の低下に関連するとの報告がある。
 急性毒性の症状は、嘔吐、腹痛、下痢、血圧降下、昏睡などで、慢性毒性の症状は、疲労、皮膚蒼白、便秘、腹痛、けいれんなどである。

B硝酸態窒素・亜硝酸態窒素:水中への由来は、無機肥料、腐敗した動植物、生活排水、工場排水、塵芥の残さである。健康影響では硝酸塩が体内で還元菌により亜硝酸塩へ還元され、血液中のヘモグロビンと反応して酸素運搬機能のないメトヘモグロビンになり、チアノーゼ症や窒息状態を起こすので、合計量で評価される。特に、胃酸分泌の少ない乳児の胃酸はpH4以上であるため亜硝酸態窒素が多く生成される。大人の胃酸はpH2〜3なので、還元はほとんど起こらない。
 一般的に浅井戸は地表からの汚染を受けやすく、硝酸態窒素の濃度が高く、経年的な増加 傾向が見られる。

C消毒剤:高濃度塩素水から発生する塩素ガスは有毒ガスであり、塩素ガスを吸い込んだり、 皮膚に付着させないようにすることが必要である。ただし、水道水レベルの濃度の残留塩素水を飲んでも直ちに唾液などで中和されるので、健康障害が起こる心配はない。


6.水道法水質基準*

 @水質基準項目、基準値及び意義6)


7.貯水槽*


8.物理化学的物質による水質汚染*


9.消毒*

 *(略:参照下さい/当協会編、改訂 給水用防錆剤の手引、31〜45)


※詳細は下記を参照下さい。

1)給水用防錆剤協会編:改訂給水用防錆剤の手引、26〜45(水質衛生)、2004

2)・レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針(H15.7.25 厚生労働省告示 第264号)
  (厚生労働省のホームページ) http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/legionella/030725-1.html
  ・旅館・公衆浴場等におけるレジオネラ症防止対策について
  (厚生労働省のホームページ) http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/legionella/index.html
  ・厚生省生活衛生局企画課監修:新版レジオネラ症防止指針、(財)ビル管理教育センター
  ・抗レジオネラ用空調水処理剤協議会:冷却水系のレジオネラ症防止に関する手引き

3)石原信次:知っておきたい水のすべて、(株)インデックス・コミュニケーションズ、148〜151、2004

4)ノロウイルス食中毒の予防に関するQ&A
  (厚生労働省のホームページ)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/12/h1208-1.html
5)谷腰欣司:トコトンやさしい水の本、日刊工業新聞社、60〜98、2004

6)・日本給水用防錆剤協会編:改訂 給水用防錆剤の手引、33〜37、2004
  ・日本環境管理学会編:改訂3 水道水質基準ガイドブック、丸善(株)、2004




                    給水用防錆剤の濃度検査
 


□ 給水栓水における給水用防錆剤の濃度検査

1.試験方法(JIS K0101 工業用水試験方法

1-1 リン酸塩系防錆剤の濃度検査
(モリブデン青法)
    

給水栓水におけるリン酸塩系防錆剤は、ポリリン酸塩が主成分であることから、
分析に
際しては、一旦酸を加えて煮沸し加水分解によってリン酸イオン(PO4
とし濃度検査を行
わなければならない。

1)測定原理
  検水に酸を加えて煮沸しポリリン酸をリン酸イオン(PO4)として、これにモリブデン酸アンモニウム溶液を加えて、リンモリブデン酸を生成させ、これにアスコルビン酸を加えて還元し、得られたモリブデン青の青色を吸光光度分析法により波長880nm付近における吸光度を測定し、リン酸イオン濃度を求める方法である。
リン酸イオンの値に係数を掛けて
P2O5濃度を求める(PO4×0.75
  本法の定量範囲は、リン酸イオン(PO4)として0.13.0mg/l(0.072.2P2O5mg/l)である。

2)検査手順

工 程

容  器

操  作

備  考


加水分解
















発 色


ビーカー

(200ml)


















比色管




















吸収セル


試料100mlをビーカーに入れる1)

硫酸−硝酸の混酸1mlを加え約90分間加熱する

|

放冷

水酸化ナトリウム溶液を加えて中和し、精製水を加えて100mlとする

試験溶液25mlを比色管に入れる

モリブデン酸アンモニウム−アスコルビン酸混合溶液2ml

を加える

良く振り混ぜる

|

静置15

波長880nm付近の吸光度を測定し検量線により濃度を測定







精製水を時々加えて液量を2550mlに保つ







試験溶液
























青色
測定範囲
0.13.0PO4mg/l(0.072.2P2O5mg/l)

   注:1)工業用水試験方法においては、試料を適量とるとなっているが、
     実用性を
考慮して、ここでは一定量の100mlとした。



1−2 ケイ酸塩系防錆剤の濃度検査(モリブデン黄法)
 
 

給水栓水におけるケイ酸塩系防錆剤はポリケイ酸が主成分であるが、防錆剤を添加する前の給水にはすでに1030mg/l程度のケイ酸(SiO2)が含まれている。その為、防錆剤を添加する前の給水のケイ酸塩の検査を行い、防錆剤添加後の給水のケイ酸塩濃度を検査し、その差から防錆剤濃度を求める。

防錆剤濃度=(防錆剤添加後の給水栓水中のケイ酸塩濃度)―(防錆剤添加前の給水栓水中のケイ酸塩濃度)

なお、液状のケイ酸塩系給水用防錆剤をインターロック方式又は流量比例注入方式で注入している場合は、注入量を計算しておくとよい。

1)測定原理
 検水に塩酸(1+1)とモリブデン酸アンモニウム溶液とを加えると、溶解しているケイ酸塩はモリブデン酸アンモニウムと作用しモリブデン黄を呈する。これにしゅう酸溶液を加え、吸光光度分析法により波長410450nmの吸光度を測定し、ケイ酸塩濃度を求める方法である。
本法の定量範囲は、ケイ酸塩として220mg/lである。

2)検査手順

工 程

容 器

操  作

備  考


発 色


メスシリンダー























吸収セル


試料50mlをメスシリンダーにとる

塩酸(1+1)ml、モリブデン酸アンモニウム溶液2mlを加える

良く振り混ぜる

静置5

しゅう酸溶液1.5mlを加える

静置1

波長410450nmの吸光度を測定し検量線により濃度を測定







モリブデン黄の発色











リン酸イオンが共存しない場合は添加しない






測定範囲
220 SiO2mg/l

   ケイ酸が微量の場合には、モリブデン青吸光光度法又はモリブデン青抽出吸光光度法により
   ケイ酸濃度を求める。

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